「性格が合わないから」突然、離婚を告げられたら。あなたの心を守るために知ってほしい4つのこと

弁護士の石井です。

このブログは、主に長年の夫婦関係に悩み、「もう限界かもしれない」と感じている女性の皆さんに寄り添い、次の一歩を踏み出すお手伝いをしたいという想いで運営しています。

ただ、今日は少しだけ視点を変えて、「パートナーから突然、『性格の不一致だ』と離婚を切り出されてしまった」というケースについて、お話しさせてください。

弁護士 石井
弁護士 石井

正直にお話ししますと、このような「突然、離婚を切り出された」というご相談で私の事務所のドアを叩かれるのは、不思議と、夫の立場にある男性の方が多いんですよね。

もちろん、同じように悩む女性の方からのご相談も受けておりますが、今回は、実際に私が担当した夫側の事例を元に、法的に何が起こり、どう対処していくのかを見ていきたいと思います。

ですので、もしあなたが「パートナーから離婚を切り出されてしまった」という同じ状況であれば、この記事は直接お役に立てるはずです。

また、もしあなたが「離婚を切り出そうか」と考えている側であれば、相手がどう感じ、法的にどのような状況に置かれるのかを知ることで、ご自身の考えを整理する上で、何かしらのヒントになるかもしれません。

望さん(仮名・40代)は、奥様のリナさん(仮名)、そして5歳になる息子さんと暮らす、ごく普通の家庭の主でした。

仕事に真面目で、家族を支えることを何より大切に考えていました。

もちろん、夫婦ですから、意見がぶつかることもありました。

リナさんから「価値観が違う」「その感覚はおかしい」と言われ、口論になることも一度や二度ではありません。

それでも、それも家族の日常の一部だと、望さんは思っていたのです。

しかし、その日常は、ある日突然終わりを告げます。

いつものように仕事から帰宅すると、家の中は不自然なほど静まり返っていました。

リビングの家具がいくつかなくなり、いつも「おかえり」と駆け寄ってくるはずの息子さんと、リナさんの姿が見当たりません。

携帯には、リナさんからの短いメッセージだけが残されていました。

「もう限界です。私たちは別の場所で暮らします。子供のことは心配しないでください」

電話をかけても、出ない。

メッセージを送っても、返信はない。

何が起きたのか分からないまま、ただ時間だけが過ぎていく・・・ 望さんは、不安と混乱の中で数日間を過ごしました。

そんな時、一通の封筒が自宅に届きます。

差出人は、リナさんの代理人を名乗る弁護士でした。

封筒の中身は、いわゆる「受任通知書」と呼ばれるものです。

これは、パートナーが弁護士に依頼し、離婚に向けて法的な手続きを始めるという合図。

多くの方が、この手紙を「もう終わりだ」という最後通告のように感じ、深く傷つき、動揺してしまいます。

その手紙には、望さんにとって、到底受け入れがたい内容が書かれていました。

・あなたの考え方にはついていけないから離婚したい

・息子の親権はこちらが持ちます

・慰謝料として100万円を支払ってください

・別居中の生活費(婚姻費用)として、毎月15万円を支払ってください

「どうして・・・」

「私が、全部悪いというのか・・・」

弁護士 石井
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望さんは、どうしていいかわからず、私の事務所のドアを叩いてくださったのです。

弁護士からの手紙が届くと、多くの方がパニックになってしまいます。

でも、どうか落ち着いてください。

これは「もう話し合いの余地はない」という通知ではなく、むしろ「これからは感情的にならず、ルールに沿って話し合いを始めましょう」という合図なのです。

一人で抱え込まず、まずは専門家に相談してくださいね。

2 あなたの心を守るための、4つの法的知識

初めてお会いした時の望さんは、「すぐに離婚しなければいけないのでしょうか」「私が全て悪いのでしょうか」と、ご自身を責め、憔悴しきっているご様子でした。

もし、あなたが望さんと同じ立場なら、同じように感じてしまうかもしれません。

でも、どうか安心してください。

法律は、一方的に関係を終わらせるための道具ではありません。

あなたの気持ちや生活を守るためのものでもあるのです。

私が望さんにお伝えした、あなたの心を守るための4つの知識について、お話しします。

2-1 「性格の不一致」だけでは、すぐに離婚にはなりません

まず、望さんが一番心配されていた「すぐに離婚しなければならないのか」という点。

「性格の不一致」だけを理由に、あなたが同意していないのに、無理やり離婚させられることはありません。

ですが、「価値観が合う・合わない」というのは、どちらかが一方的に「良い・悪い」と判断できるものではありません。

そのため、裁判所が「性格が合わないから離婚しなさい」と強制することは、基本的にはないのです。

弁護士 石井
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ただし、注意も必要です。

お互いの気持ちが離れたまま別居期間が長くなると、裁判所は「夫婦関係はすでに壊れている(破綻している)」と判断し、最終的に離婚が認められる可能性は高まります。

だからこそ、大切なのは、パニックにならず、ご自身の気持ちと向き合う時間を作ること。

「すぐに離婚に応じなければ」と焦る必要はないのです。

2-2 お子さんのこと、一番大切にされるのは「これまで」と「これから」

「もう子供には会えなくなるのでしょうか。」 そう言って声を詰まらせる望さんに、私はゆっくりとご説明しました。

どちらが親権を持つかは、「これまで、主にお子さんの面倒を見てきたのはどちらか(監護実績)」、そして「これからの生活環境がお子さんの心身の成長にとって望ましいか」という視点で判断されます。

たとえ離れて暮らしていても、親であることに変わりはありません。

お子さんと定期的・継続的に会って交流する「面会交流」という権利が、法律でしっかりと認められています。

まずはお子さんと会う機会を作り、親としての関わりを続けていくことが何よりも大切です。

2-3 慰謝料は、必ず払わなければいけないものではありません

「私が悪いから、慰謝料を払わないといけないのでしょうか」 これも、多くの方が誤解されている点です。

法律上の「慰謝料」とは、不倫(不貞行為)やDV(暴力)など、相手の違法な行為によって受けた精神的な苦痛に対する賠償金のことです。

「性格が合わない」というのは、どちらかが一方的に悪いわけではありません。

そのため、「性格の不一致」だけを理由として、慰謝料の支払いが命じられることは、まずありません。

このことをお伝えすると、望さんは少しだけホッとされたようでした。

2-4 別居中の生活費は、お互いの状況で公平に決まります

最後に、婚姻費用の問題です。

弁護士 石井
弁護士 石井

「婚姻費用」という言葉は、あまり聞き慣れないかもしれませんね。

これは、夫婦が別居している場合に、収入の多い方が少ない方に対して支払う生活費のことです。

法律では、夫婦はたとえ別居していても、お互いに助け合い、同程度の生活レベルを維持する義務があると考えられているのです。

リナさん側は一方的に「月15万円」と要求していましたが、この金額は、お互いの収入に応じて、ある程度公平な基準で算定されます。

一方的な要求を鵜呑みにする必要はありません。

3 法律は、あなたの心に寄り添うための道しるべ

一通りお話を終えた時、望さんは、「自分がどういう状況にいるのか、何をすべきなのかが分かっただけで、少し冷静になれました」とおっしゃってくださいました。

突然、当たり前の日常を奪われ、一方的な要求を突きつけられたら、誰だってパニックになります。

そんな時、弁護士に相談するというのは、必ずしも「戦う」ためだけではありません。

ご自身の法的な立場を正確に知ることで、過剰な不安から解放され、冷静さを取り戻す。

そして、「離婚するのか、しないのか」「どうすれば関係を修復できるのか」ご自身の本当の気持ちと向き合い、これからどうしたいのかを、ゆっくり考える時間と心の余裕を取り戻す。

弁護士 石井
弁護士 石井

そのための「心の置き場所」として、私たちのような専門家がいるのだと、私は思っています。

4 さいごに

この記事では、「離婚を突きつけられた側」の望さんのお話をご紹介しました。

ですが、もしかしたら、これを読んでくださっているあなたの中には、「私が、もう限界かもしれない・・・」と、望さんの奥様であるリナさんに近いお気持ちを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

どちらの立場であっても、一人でその想いを抱え続けるのは、本当に辛いことです。

  • 私が我慢すれば
  • これくらいで辛いなんて、贅沢なのかも
  • 離婚するほどの理由じゃないし

そうやってご自身の気持ちに蓋をしてしまう前に、一度、お話ししてみませんか?

法律は、あなたの人生を縛るものではなく、あなたがあなたらしく、幸せな未来を選び直すための、一つの道しるべになるはずです。

あなたの心が、少しでも軽くなるためのお手伝いができれば、これ以上の喜びはありません。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

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