こんにちは。弁護士の石井です。
- 夫の何気ない一言に、心がズキッとする
- 決定的な理由もなくイライラした態度に、どうしていいか分からない。
- でも、こんなことで悩むなんて、私がおかしいのかな
そんな風に、ひとりで気持ちを抱え込んでいませんか?

夫婦の間では、時にはすれ違いや誤解が生じることもありますよね。
でも、もしあなたがパートナーの一方的な言葉や行動によって、日常的に心が傷つき、精神的な疲労を感じているとしたら、それは、あなたが我慢し続けなければいけないことではないかもしれません。
もしかしたら、それは「モラルハラスメント(モラハラ)」と呼ばれるものかもしれません。
今回は、パートナーからのモラハラに焦点を当てて、あなたの心が少しでも軽くなるような情報をお伝えできればと思っています。
モラルハラスメント(モラハラ)とは、目に見える暴力とは違い、言葉や態度によって相手の心をじわじわと傷つけ、追い詰めていく行為のことです。

「そんなつもりじゃなかった」「冗談だよ」…そんな言葉で片付けられてしまうことも多いかもしれません。
でも、あなたが「つらい」「苦しい」と感じているのなら、それは決して些細なことではありません。
その心の傷は、時として「夫婦だから仕方ない」と見過ごされてしまうこともあります。
でも、積み重なると、あなたの心身に大きな影響を与えてしまうこともあるのです。
2 こんなことありませんか? モラハラのサイン
「こんな風に感じるのは、私が我慢が足りないだけなのかな…」
そうやって、ご自身の心に湧き上がる小さな違和感や、言葉にならない息苦しさを、見て見ぬふりをしていませんか?
長年連れ添った夫婦だからこそ、「こんなものだ」と思い込もうとしたり、「私が変わればいいのかもしれない」と自分を責めてしまったり…。
でも、その「なんとなくの限界感」は、あなたの心が発している大切なサインかもしれません。
ここでは、あなたが日々感じているかもしれない心の揺らぎと、その背景にあるかもしれない出来事を、一緒に見つめ直してみませんか。
2-1 威圧的な言動で心を追い詰める
「また私が何か間違えた…?」ご主人の言葉や態度に、いつも心が張り詰めていませんか?
・誰のおかげで生活できてると思ってるんだ。
・なんで、こんなことも出来ないんだ
そんな言葉や、ため息、冷たい態度に、心がズキッとしたり、体がこわばったりすることはありませんか?
そのたびに、「私がもっと上手にやれば良かったんだ」「夫を怒らせる私が悪いのかな」と、いつの間にか全ての原因が自分にあるように感じてしまう。

そんな風に、ご自身の心を責め続けているとしたら、それはとてもお辛いことですよね。
2-2 生活費を渡さない・経済的に支配する
パートナーが「自分の方が稼いでいるんだから」という立場を利用して、あなたを経済的にコントロールし、精神的に追い詰めるようなことはありませんか?
例えば、何か意見が対立したり、夫の思い通りにならないことがあったりすると、
・俺の言うことを聞かないなら、今月の生活費は渡さないからな
・お金が欲しければ、もっと俺の言う通りにしろ
そんな風に、まるで生活費を人質に取るような形で、あなたを従わせようとしてくる。
「生活のためには、夫の機嫌を損ねるわけにはいかない」 「波風を立てないためには、私が折れるしかない」 そうやって、経済的な弱みにつけこまれ、仕方がないと諦めて、理不尽な要求をのんでしまう。

そんな毎日では、まるで心が鎖で縛られているように感じて、息苦しくなってしまいますよね。
2-3 物にあたって恐怖を与える
物に当たる大きな音、「また私が怒らせた?」と、息を潜めていませんか?
例えば、あなたが何かをした後や、口論の最中に、大きな音を立ててドアをバタンと閉めたり、テーブルを拳でドンと叩いたり、壁を蹴りつけたり、手元の物を投げつけたりするような行動です。
直接あなたに手が上げられるわけではないかもしれません。
だから、「少しカッとなっただけだろう」「私に直接何かされたわけじゃないから大丈夫」と、心の中で自分に言い聞かせようとすることもあるのではないでしょうか。
でも、その激しい物音やパートナーの荒々しい姿を目にするたび、あなたの心は凍りつき、「もしかしたら、次は私自身にこの怒りが向けられるかもしれない」という、声にならない恐怖でいっぱいになる瞬間はありませんか。
壊れたり傷ついたりした物を見るたびに、あの時の緊張感が蘇り、家の中にいても心が休まらない。

安心できるはずの場所で、パートナーの感情の爆発に常に怯え、息を潜めるように過ごしているとしたら、それはあなたの心が少しずつ蝕まれていっているサインかもしれません。
2-4 家族を侮辱する
あなたのパートナーから、あなたが大切に育ってきたご家族や、かけがえのないご親族に対して、見下したり、馬鹿にしたりするような心ない言葉を投げつけられることはありませんか。
・本当に君の親は常識がないよな
・お前の兄弟は見ていてイライラする
・あんな家で育ったから、君もどこかおかしいんだ
というように、あなた自身の人格と結びつけて、ご家族を侮辱するような言葉を浴びせられたりする。
「そんな風に言わないでほしい」と心の中で叫んでいても、パートナーの強い口調や威圧的な態度に、何も言い返せずにぐっと堪えてしまう。
そして、「私がしっかりしていれば、家族までこんな風に言われないのかもしれない」と、いつの間にかご自身を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、あなたが大切に思っている人たちを、一方的な価値観で貶め、あなたの心を深く傷つけるような言葉は、決して受け流していいものではありません。

それは、あなたの尊厳を踏みにじる、とても悲しい行為です。
2-5 束縛や監視をする
あなたのパートナーは、「心配だから」「君が大切だから」という言葉を使いながら、あなたの行動や交友関係を細かく把握し、管理しようとすることはありませんか。
あなたが誰とLINEでどんなやり取りをしているのか知りたがったり、友人との集まりや外出の予定に細かく口を出して制限しようとしたり、時にはあなたの行動を逐一報告させようとしたりするようなことです。
最初は「私のことを気にかけてくれているんだな」「それだけ私のことを愛してくれているのかもしれない」と、その行動を愛情の表れだと受け止めようとしたかもしれません。
でも、その「心配」や「愛情」という言葉の裏にある束縛が度を超えてくると、まるで常に監視されているような息苦しさを感じ、あなたの心は少しずつ自由を奪われていくのではないでしょうか。
自分の時間や交友関係、プライバシーまでもがパートナーの管理下に置かれ、まるで鳥かごの中にいるような感覚。
それは、本来お互いを尊重し合うべき関係性とは言えません。

その息苦しさの中で、あなたは気づかないうちに心をすり減らし、自分らしさまで見失いかけているのかもしれません。
2-6 自分の価値観を一方的に押しつける
パートナーの価値観に、あなたの「好き」が息苦しくなっていませんか?
あなたが心から楽しんでいる趣味や、大切にしている考え方に対して、あなたのパートナーから
・なんでそんなものが好きなの?私には理解できないな
・その考え方は、ちょっとおかしいんじゃないか
と、否定的な言葉を投げかけられることはありませんか。
夫婦であっても、それぞれが異なる人間ですから、好きなものや価値観が違うのは当たり前のことです。
お互いの違いを認め合い、尊重し合えるのが理想ですよね。
でも、あなたの「好き」や「大切にしたいこと」をパートナーに理解してもらえず、一方的に「おかしい」「普通じゃない」と否定され続ける日々が続くと、だんだん自分の気持ちを表現するのが怖くなってしまうかもしれません。
「私が変わっているのかな」「この話をするのはやめよう」と、いつの間にか自分の意見や感情を心の奥にしまい込み、パートナーの反応を気にしてしまう。
そんな風に、あなたの「好き」という気持ちや、あなた自身の「色」が少しずつ薄れていくような、言いようのない息苦しさを感じているのではないでしょうか。

それは、あなたの心が窮屈な思いをしている証拠です。
2-7 性的な強要
あなたのパートナーから、あなたの気持ちや体調を全く考慮しないまま、一方的に性的な行為を求められることはありませんか?
・夫婦なんだから、これくらい当たり前だろう
・まさか拒否しないよな?
あなたがどんなに疲れていたり、精神的に落ち込んでいたりして、「今はそういう気分になれない」と伝えたとしても、パートナーはそれを聞き入れようとせず、不機嫌になったり、時にはあなたを責めるような態度をとったりする。
その結果、あなたは「私が我慢すればいいだけ」「夫婦関係を壊したくないから」と、自分の本当の気持ちを押し殺し、ただ応じるしかないような状況に追い込まれてしまう。
でも、行為が終わった後に残るのは、深い虚しさや自己嫌悪、そしてパートナーへの不信感だけかもしれません。
結婚しているからといって、一方の性的欲求を満たすためだけに、もう一方の心や尊厳が踏みにじられて良いわけでは決してありません。
相手の気持ちを完全に無視した性行為の要求は、たとえ夫婦間であっても、愛情とはかけ離れた明確なハラスメントです。

そして、心が置き去りにされたままの関係は、結婚生活そのものを耐え難いほど苦しいものに変えていってしまいます。
2-8 子どもを巻き込む
あなたのパートナーが、大切なお子さんの前で、あなたのことを否定したり、軽んじたりするような言動をとることはありませんか?
・ママは本当に頼りにならないねえ
・おうちがこんなに散らかっているのは、ママがちゃんとしていないからだぞ
と、お子さんと一緒になってあなたを責めたりするような状況です。
最初は「また冗談を言っている」「本気じゃないはず」と思おうとしても、そうしたことが日常的に繰り返されるうちに、お子さんまでもがパートナーに同調し、あなたに対して批判的な態度をとるようになってしまう。
そんな風に、一番安心できるはずの家庭の中で、まるで自分だけが孤立してしまったかのような、深い孤独感や無力感に苛まれるのは、言葉にできないほどお辛いことではないでしょうか。
母親としての自信も、一人の人間としての尊厳も、深く傷つけられてしまいます。
これは、単なる夫婦間の問題として片付けられるものではなく、あなたを精神的に追い込み、家庭内で孤立させるための、とても悲しい手口の一つと言えるかもしれません。

そして、このようなパートナーの行動は、お子さんの心にも、家族関係に対する歪んだ認識を与えてしまう可能性のある、非常に深刻な問題なのです。
3 あなたの未来のためにできること
家庭の中で繰り返されるパートナーからの心ない言動は、はっきりとした証拠として残りにくいため、誰かに相談しても「夫婦のことだから」「どこの家庭でもあることよ」と、その深刻さを理解してもらえないことがあるかもしれませんね。
そして、何よりもあなた自身が「私がもっと我慢すればいいんだ」「私が悪いから、パートナーもああなってしまうんだ」と自分を責めたり、「これくらいで離婚を考えるなんて、自分はおかしいのかもしれない」と、ご自身の本当の気持ちに蓋をしてしまったりすることがあるのではないでしょうか。
でも、そうやって目に見えないストレスを一人で抱え込み、無理を重ねてしまうと、気づかないうちにあなたの心や体が限界を超えて、深刻な影響を受けてしまうことも決して少なくありません。

もちろん、夫婦間の問題は、まずお互いが誠実に向き合い、話し合って解決できるのが一番望ましい形です。
でも、もしあなたのパートナーが、あなたの言葉に真摯に耳を傾けようとしなかったり、そもそも対等な立場で話し合うことが難しいような関係だったりする場合には、残念ながら、お二人だけで解決の糸口を見つけるのは非常に困難かもしれません。
だからといって、「もう離婚という道しか残されていないんだ」と、すぐに結論を急ぐ必要はありません。
でも、もしあなたが「このままの関係を続けていたら、いつか本当に自分が壊れてしまうかもしれない」と心の底から感じているのなら、ご自身の心と体を守り、穏やかな未来を手に入れるために、どのような選択肢があるのかを知っておくことは、とても大切な一歩になります。
例えば、もし離婚という選択を考えた場合に、どのような準備や手続きが必要になるのか、そして離婚後の生活は具体的にどのようなものになるのか。

そういった情報を少しずつ集めてみることから始めてみませんか。
それは、今すぐ何かを決断するためではなく、あなたが安心してこれからの人生を考え、ご自身にとって最善の道を選んでいくための、大切な準備なのです。
4 さいごに
ここまで読み進めてくださり、本当にありがとうございます。
もしあなたが、今、パートナーとの関係で言葉にできないようなお悩みや、「このままではいけないかもしれない」というお気持ちを抱えていらっしゃるのなら、どうかその大切な心の声を、これ以上ご自身の中だけに押し込めないでください。
「こんなことで弁護士に相談してもいいのだろうか」 「まだ離婚すると決めたわけではないし、話を聞いてもらうのは大げさかもしれない」 そんな風に、ためらってしまうお気持ちもよく分かります。

でも、私は、法律的な解決策を提示するだけが役割だとは考えていません。
あなたが抱えている不安や混乱したお気持ちにじっくりと耳を傾け、絡まった糸を一緒にときほぐすように、あなたの心を整理するお手伝いをしたいと心から願っています。
あなたが不必要にご自身を責めたり、先の見えない不安に心をすり減らしたりすることなく、少しでも穏やかな気持ちを取り戻せるように。
そして、辛い現状から一歩を踏み出し、あなたらしい笑顔でこれからの人生を歩んでいけるように。
「離婚するかどうか」という結論がまだ出ていなくても、全く問題ありません。
「まずは誰かにこの気持ちを聞いてほしい」「自分の状況を客観的に見て、どんな選択肢があるのかを知りたい」そんな風に、ご自身の心と向き合うための最初のステップとして、頼っていただけたら嬉しいです。
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