「離婚したいなんて、私のわがままなのかな?」その罪悪感の正体と向き合う方法

相談者様
相談者様

夫に暴力や借金があるわけじゃない。決定的に嫌いなわけでもない。

でも、この先の人生を考えたとき、ふと心が曇るんです。

『離婚したいなんて、私のわがままなのかな』って・・・。

そう自分を責めてしまう気持ち、決してあなただけではありません。

こんにちは、弁護士の石井です。

弁護士 石井
弁護士 石井

私はこれまでに、同じようなお悩みを抱えた女性から多くのご相談をいただいてきました。

40代・50代という人生の節目を迎え、家族のためだけではなく「自分のこれから」を考えたときに、頭をよぎる「離婚」という二文字。

しかし、その思いと同時に「罪悪感」という重い感情に苛まれてしまう方は、決して少なくありません。

この記事では、その罪悪感の正体を一緒に見つめ直し、あなたの心を少しでも軽くするヒントをお伝えしたいと思います。

離婚を考えるときに生まれる罪悪感は、一つの感情ではありません。

様々な思いが複雑に絡み合って、あなたを苦しめているのです。

まずは、それを一つひとつ解きほぐし、可視化してみましょう。

「決定的な理由がない」ことへの罪悪感

夫の不倫やDVといった、誰が見ても明らかな理由がないのに離婚を考えるなんて、自分はわがままなのではないか

そう感じてしまうのは、とても自然なことです。

しかし、以下のグラフが示す通り、ある調査でも実際の離婚原因で最も多いのは「性格の不一致」であり、長年の価値観のズレやコミュニケーション不足が積み重なった結果なのです。

出典:離婚弁護士ウォークのアンケート調査を基に作成

それは、たとえば、こんな小さなズレの積み重ねです。

・「ありがとう」の一言がない

・自分の話を聞いてくれない

・家庭への無関心

弁護士 石井
弁護士 石井

一つひとつは些細なことでも、何十年と続けば、それは心を蝕む精神的なストレスとなりるのです。

決定的な事件がないからこそ、あなたの苦しみは周囲に理解されにくく、それが孤独感と罪悪感を深めてしまうのです。

「妻」「母」という役割を降りることへの罪悪感

結婚してから長年、「〇〇さんの奥さん」「〇〇ちゃんのお母さん」として生きてきたあなたにとって、その役割はアイデンティティの一部になっているかもしれません。

離婚は、その慣れ親しんだ役割から「降りる」ことを意味します。

以下の資料が示すように、特に子育てが一段落し、自分の時間ができたときに「本当の自分とは何だろう?」と自問し、役割喪失からくる「自分らしさ」の喪失感に直面する女性は多くいるようです。

いわゆる“空の巣症候群”になった女性の姿が問題とされている。

すなわち,家庭のために尽くしてしてきた主婦が子供の自立とともに自らの役割を失い,その為に「自分らしさ」を喪失し,「本当の自分とは?」「自分らしく生きるとは?」 というような問題に悩まされるというのである。

出典:伊藤正哉「自分らしくある感覚(本来感)についての心理学的研究」

この喪失感への恐れが、「役割を放棄する」ことへの罪悪感に繋がっているのです。

子どもや親への罪悪感

・自分の決断で、子どもを傷つけてしまうのではないか

・年老いた親をがっかりさせてしまうのではないか

これは、離婚を考える女性が抱える最も大きな葛藤の一つです。

半数の方が「子どもへの影響」を理由に離婚をためらったという調査結果もあります。

出典:PR TIMES「離婚を迷う人が離婚を決断する理由とは?最も多かったのは「夫婦としての将来が見えなくなった」。離婚後、離婚を後悔した人の割合は15%。離婚経験者を対象に離婚の決断理由と後悔について徹底調査。

しかし、ここで一度立ち止まって考えてみてください。

弁護士 石井
弁護士 石井

両親が互いに無関心であったり、常に緊張感が漂っていたりする家庭は、子どもにとって本当に幸せな環境でしょうか。

離婚後に母親が心からの笑顔を取り戻すことで、かえって子どもとの関係が良好になったという体験談は、驚くほど多く寄せられます。

あなたの幸せが、巡り巡って子どもの幸せに繋がる可能性もあるのです。

2 罪悪感から自己理解へ!

罪悪感の正体が見えてきたら、次はその感情とどう向き合っていくかです。

ここでは、ご自身の気持ちを整理し、自己理解を深めるための3つのステップを紹介します。

これは、ナラティブ・アプローチという心理学的なアプローチを参考にしたもので、自分自身の物語を再構築していくプロセスです。

ナラティブ・アプローチとは?

簡単に言えば、「あなたを苦しめているのは出来事そのものではなく、それをどう受け止め、どう語ってきたか」に目を向ける方法です。

 

たとえば、

「私はダメな妻だ」

「この人生は我慢するしかない」

 
そんな思い込みが、知らず知らずのうちに、あなた自身の人生の物語を縛っていることがあります。

でもその物語は、本当に「あなたのすべて」なのでしょうか?

このアプローチでは、そうした物語を「語り直す」ことで、これまで見えていなかったあなたの強さや、本当の願いに気づいていきます。

 
専門家が正しい答えを与えるのではなく、あなた自身が「語る」ことを通して、心を解きほぐしていく。

それが、ナラティブ・アプローチの大きな特徴です。

ステップ1:「あなたの物語」を言葉にする

まずは、誰に見せるでもなく、ご自身の気持ちをノートに書き出してみてください。

  • 結婚したとき、どんな未来を夢見ていましたか?
  • いつから、何が、少しずつ変わっていったと感じますか?
  • 「嬉しい」「悲しい」「寂しい」と感じた具体的な出来事は何でしたか?
  • 今、本当はどうしたいと願っていますか?
ワンポイントアドバイス

不満を羅列するのではなく、「あなたの物語」として綴ること

言葉にすることで、漠然としていた感情が整理され、自分でも気づかなかった本心が見えてくることがあります。

これは、自分自身を客観的に見つめ、自分を取り戻すための第一歩です。

ステップ2:感情と事実を切り分ける

次に、書き出した物語の中から、「感情」と「事実」を切り分けてみましょう。

こうして整理するだけで、気持ちの混乱から一歩距離を置けるようになります。

感情:「私は大切にされていないと感じて、とても悲しかった」

事実:「私の誕生日に、夫から『おめでとう』の一言もなかった」

このように切り分けることで、感情的な混乱から一歩引いて、状況を客観的に分析できます。

この事実の記録は、もし将来的に法的な手続きを考える際にも、ご自身の主張を裏付ける重要な証拠となり得ます。

弁護士 石井
弁護士 石井

離婚の手続きに興味がある方は以下記事も参考に見てみてくださいね。

【2025年版】離婚したいけど何から始めればいい?準備から手続きまで弁護士が完全ガイド

ステップ3:小さな「自己決定」を積み重ねる

長年、家族を優先する生活を送っていると、「自分で決める」という感覚が薄れてしまうことがあります。

失われた自己肯定感を取り戻すために、日常生活の中で小さな「自己決定」を意識的に行ってみましょう。

  • 夫の好みに合わせず、自分が本当に食べたいものを夕食にする。
  • 誰にも気兼ねなく、一人でカフェに行き、好きな本を読む時間を作る。
  • ずっとやってみたかった趣味のサークルや習い事の資料を取り寄せてみる。

どんなに小さなことでも、「自分で選んで、実行できた」という成功体験は、傷ついた自己肯定感を育み、「自分の人生のハンドルは自分で握っていいんだ」という自信に繋がっていきます。

弁護士 石井
弁護士 石井

ぜひ試してみてください。

3 さいごに

相談者様
相談者様

私さえ我慢すれば、家庭はうまくいく

そう思って、自分の気持ちをずっと後ろに押しやってきた方は少なくありません。

けれど、その我慢は本当に必要なのでしょうか。

あなたが抱えている罪悪感は、「自分だけ幸せを求めてはいけない」という思い込みから生まれていることが多いのです。

でも、幸せを願うことは決してわがままではありません。

むしろ、それは人として自然で、これからを生きるための大切な原動力です。

人生100年時代と言われる今、40代・50代はまだ折り返し地点。

この先の何十年を、我慢と諦めで過ごすのか。

それとも、自分らしい笑顔を取り戻して過ごすのか。

その選択をする権利は、間違いなくあなた自身にあります。

離婚は、決して人生の終わりではありません。

あなた自身の人生の再出発になるのです。

  • 私の気持ちは存在していいんだ
  • 幸せを望むことは、わがままじゃない

そう心の中で何度も唱えてみてください。

その言葉は、きっと少しずつ固まってしまった心をほどき、次の一歩へと背中を押してくれるはずです。

この記事を読んで、もし少しでも心が軽くなったり、次の一歩を考えるきっかけになったりしたなら、これほど嬉しいことはありません。

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