別居中の生活費はいくらもらえる?婚姻費用の目安と請求前の準備

書類とノートを整理する女性と「別居中の生活費 いくらもらえる?」の文字

「少し離れて暮らしたい。でも、パートの収入だけでは生活できない」「家を出たら、夫に生活費を求めることはできないのかな」

別居を考えたとき、最初に行き詰まりやすいのがお金の見通しです。離婚するかまだ決めていないなら、なおさら話を切り出しにくいかもしれません。

別居しただけで、夫婦の生活費を分担する関係がなくなるわけではありません。婚姻中の生活費について、相手に「婚姻費用」の分担を求められる場合があります。

ただし、希望する金額がそのまま支払われたり、請求した翌日に入金されたりするとは限りません。この記事では、金額の目安、請求する時期、準備する資料を順に整理します。子どもがいない方や、子どもが独立した方も対象です。

暴力や脅しがある場合は、安全確保を優先してください。生活費を求めるために無理に直接話し合う必要はありません。緊急時は警察へ、避難を含む相談はDV相談ナビ(#8008)などの窓口へ連絡してください。#8008には通話料がかかり、受付時間は接続先の機関によります。

婚姻費用とは?子どもがいない夫婦にも関係する生活費です

婚姻費用は、婚姻中の夫婦や、経済的に自立していない子どもの生活に必要な費用です。食費や住居費のほか、医療・教育などの費用も関係します。離婚に対する慰謝料や、夫婦の財産を分ける財産分与とは別の話です。

子どものための養育費だけではなく、配偶者自身の生活費も含むため、「子どもがいないから関係ない」とは言えません。また、妻だけが請求できる制度でもありません。夫婦双方の収入や生活状況などによって、どちらがいくら負担するかを考えます。

離婚をまだ決めていなくても、別居中の生活費を整理することはできます。別居全体の準備については、離婚前に別居を考えるときの準備と注意点もご覧ください。

参考:裁判所「家事事件Q&A」養育費/婚姻費用分担

いくらもらえる?まずは算定表の「目安」を確認します

婚姻費用には、全員に共通する月額が決められているわけではありません。家庭裁判所の手続では、双方の収入や子どもの人数・年齢に応じた婚姻費用の算定表が、金額を検討する目安として使われています。

算定表を見るときの順番

  1. 家族構成に合う表を選ぶ。養育費の表ではなく、婚姻費用の表10〜19を使います。夫婦のみなら表10、扶養する子どもがいる場合は人数・年齢に合う表を確認します。
  2. 夫婦それぞれの年収を確認する。給与所得者は原則として源泉徴収票の「支払金額」を使います。毎月の振込額をそのまま12倍した手取り年収とは違います。
  3. 給与と自営業の目盛りを区別する。支払う側の年収を縦軸、受け取る側を横軸に当てはめ、交点の金額帯を確認します。

自営業の場合は売上高をそのまま使うのではなく、確定申告の内容を確認し、必要な調整をします。給与と事業収入の両方がある場合や、退職・転職などで収入が大きく変わった場合も、資料をもとに確認してください。

参考:裁判所「養育費・婚姻費用算定表について」(PDF)

夫婦のみ・夫の給与年収500万円、妻100万円の例

例えば、子どもの扶養費を含めず夫婦のみで計算し、夫の給与年収が500万円、妻の給与年収が100万円とします。他の収入や特別な調整事情はないと仮定した、表の読み方の例です。

算定表の読み方を確かめる仮定例
使う表表10「婚姻費用・夫婦のみの表」
支払う側夫:給与年収500万円
受け取る側妻:給与年収100万円
表上の目安月額6〜8万円の帯

これは全国の平均額でも、同じ年収なら必ず受け取れる額でもありません。実際には、住宅費の負担、すでに支払われているお金などの事情も確認します。金額帯の真ん中が自動的に採用されるわけでもありません。

出典:裁判所「表10 婚姻費用・夫婦のみの表」(PDF)。給与の目盛りで縦500万円・横100万円を参照。

「算定表の金額」と「家計の不足額」は別です

毎月の赤字が10万円だから、相手が必ず10万円負担する、という計算ではありません。反対に、自分にパート収入があるだけで、婚姻費用を求められなくなるとも限りません。

法テラスの案内でも、算定表の金額をもとに、実際の手続では個別事情を考慮して調整すると説明されています。まず表の目安を確認し、その後で自分の生活に当てはめる、という順番で考えましょう。

電卓とノートを使って書類を整理する女性
算定表で使う年収と、毎月の家計で使う手取りは分けて整理します。

いつからの生活費を求めるか。請求の時期と記録も大切です

「別居した日」と「生活費を請求した日」と「実際に振り込まれる日」は、同じとは限りません。

実務では、相手に生活費の分担を求めた時点が、支払開始の時期を判断する重要な目安になります。先に請求したことを確認できる記録がない場合は、調停を申し立てた月を起点に扱うことが多くなります。

このため、何か月も経ってから「別居した日まで必ずさかのぼって全部払ってもらえる」と考えるのは避けてください。過去分の合意の有無、請求内容や記録、すでに受け取った金額なども含めて確認します。

参考:第二東京弁護士会「家事事件の基礎と実践」の婚姻費用に関する実務解説(2022年掲載)。具体的な開始時期は個別の事情により判断されます。

安全に連絡できる状況なら、いつ、誰に、どの期間の生活費について、どのように分担を求めたのかが分かる形で記録を残しておくと、相談時に説明しやすくなります。メールやメッセージは、日時や前後の文脈も分かるように保管してください。

連絡する前に整理するメモ

「○月から別居している。○月分以降の生活費について分担を求めたい。自分の年収と現在の支出はここまで分かっている。金額・支払日・支払方法について、どのように決めるか相談したい」

これは考えを整理するためのメモで、送るだけで金額や開始時期が確定する請求書のひな形ではありません。相手への連絡が怖い場合は、送る前に弁護士へ相談してください。

なお、離婚後も同じ婚姻費用がそのまま続くわけではありません。離婚後の生活費や、子どもの扶養が必要な場合の養育費は、別の段階の生活設計として考えておきましょう。

請求や相談の前に、手元で確認したい資料

最初からすべての書類をそろえる必要はありません。「分かっていること」と「相手の協力がなければ分からないこと」を分けるのが出発点です。

確認したいこと手元にあれば役立つもの
夫婦の収入源泉徴収票、給与明細、確定申告書など。相手の分は適法に確認できる範囲で。
今の支払状況生活費の振込記録、家賃やローン、学費等を誰が払っているかのメモ。
生活と家族の状況別居の時期、子どもの年齢や生活場所、家計の概算、特別な医療・教育費の資料。
これまでのやり取り生活費を求めたメール等、話合いの経過、合意した書面、未払いの記録。

相手の収入が分からなくても、何もできないと決めつける必要はありません。裁判所の標準的な申立添付書類には、申立人自身の収入資料などが挙げられています。分からない点を伝え、手続の中でどのように資料を確認するか相談できます。

相手のスマートフォンやネット口座へ無断でログインしたり、危険な自宅へ資料を取りに戻ったりする方法は勧めません。資料確認の考え方は、離婚前の通帳・財産の確認についての記事でも整理しています。

話し合える場合と、話し合えない場合で進め方を分けます

話し合える場合:金額だけでなく、期間や支払方法も確認

生活費について合意できるなら、月額、いつの分から支払うか、毎月の支払日、振込先、家賃や学費を別に払うのかを整理します。すでに支払った分との重複や、何について合意したのかという食い違いを防ぐためです。

合意内容は記録に残し、未払いになった場合の対応も気になるときは、どのような形で取り決めるかを相談しておくとよいでしょう。

拒否される・話が進まない場合:婚姻費用の調停という方法

話合いがまとまらない場合だけでなく、話合い自体ができない場合も、家庭裁判所の婚姻費用分担請求調停などを利用できます。婚姻費用の調停が不成立の場合は審判手続に移り、裁判官が必要な審理を行って判断します。

婚姻費用を求める手続と、離婚するかどうかを決めることは別です。「離婚を決めた人しか申し立てられない」と考える必要はありません。

申立ての基本

申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。裁判所の案内では、収入印紙1,200円分に加えて郵便料等が必要とされています。

申立書、夫婦の戸籍謄本、申立人の収入資料、事情説明書などを準備します。書式・部数・郵便料は申立先の最新案内で確認してください。戸籍取得や弁護士への依頼等にかかる費用は別で、手続全体が1,200円で済むという意味ではありません。

参考:裁判所「婚姻費用の分担請求調停」

住所を相手に知られたくない場合は、提出前に確認してください。申立書の写しは相手に送られます。避難先などをそのまま記載・提出する前に、裁判所や弁護士へ安全上の事情を伝え、書類の記載方法や情報の取扱いを確認しましょう。裁判所の案内にも、知られたくない住所がある場合の注意が示されています。

金額が決まるまでの生活費も、別に考えておきましょう

婚姻費用を求められることと、今月の家賃をそのお金で払えることは、分けて考える必要があります。

家計を確認するときは、「今使えるお金」「毎月確実に入る手取り収入」「今後請求する婚姻費用」の3つを分けて書き出してみてください。まだ決まっていない金額を、すでに入金されるお金として計算しないことが大切です。

相手が家賃やローンなどを直接支払っている場合は、その負担と、さらに求める生活費との関係を整理します。住宅ローン、特別な医療・教育費、年金収入などがある場合も、一律に算定表へ当てはめるだけでは判断しにくいことがあります。

当面の支払が難しいときは、いつ、何の費用が不足するのかを具体的に伝え、弁護士や自治体の相談窓口などと、生活をつなぐ方法も一緒に確認してください。支援の利用や、相手からの仮払いが必ず認められるという意味ではありません。

家計全体を整理したい方は、50代からの一人暮らしと離婚後の生活費も参考にしてください。別居中の家計と、離婚後・老後の家計を混ぜないことがポイントです。

ノートを手元に置き、室内で電話をする女性
離婚の結論より先に、当面の生活を守るために確認できることがあります。

よくある質問

パート収入があっても婚姻費用を求められますか?

収入があることだけで対象外になるわけではありません。夫婦双方の収入や家族構成などを確認します。本記事の例も、受け取る側に給与年収100万円がある設定です。

自分から家を出た場合は、生活費をもらえませんか?

どちらが家を出たかという事実だけで一律に決まるものではありません。別居の理由や夫婦関係の経緯等によって請求の可否・範囲が問題になる場合があるため、その事情も相談時に伝えてください。「自分から出たから全部無理」とも「どんな場合も必ずもらえる」とも決めつけないことが大切です。

子どもが18歳を過ぎたら、夫婦のみの表でよいですか?

年齢だけで決めないでください。経済的に自立しておらず扶養が必要か、進学や生活の状況はどうかなどを確認します。本記事の「夫婦のみ」の例は、子どもの扶養費を含めない条件です。

調停で決めても支払われなかったら?

未払いの金額や時期を記録し、取り決めた書面を用意して相談してください。裁判所の履行勧告や、要件を満たす場合の差押えなど、決め方と内容に応じた手続を検討します。履行勧告自体には、支払いを強制する効力はありません。

参考:裁判所「家事事件Q&A」婚姻費用分担・履行勧告等

まとめ|離婚を決める前でも、生活費の見通しは確認できます

別居後のお金を考えるときは、自分の月収だけを見て「無理」と決めるのではなく、婚姻費用の分担も含めて整理してみてください。その一方で、算定表の目安と、実際に支払われる金額・時期は別です。

まずは夫婦の収入、今の支払状況、これまで生活費を求めた記録を、分かる範囲でまとめるところからで構いません。何が不足しているのか分かれば、次の相談もしやすくなります。

「生活費について相談する=離婚を決める」ではありません。まだ迷っている方は、離婚を決めていない段階での法律相談もご覧ください。

別居した場合の生活費を、先に整理してみませんか

「自分の収入で暮らせるか分からない」「夫に生活費をどう伝えればよいか迷う」「資料がそろっていない」。その段階でもご相談いただけます。

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制度情報の確認日:2026年9月29日。金額例は算定表の読み方を示す仮定例です。個別の請求の可否・金額・時期を確定するものではありません。